制御性T細胞(Treg)は自己免疫応答に対する重要な抑制機構であり,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性Treg,Tr-1,CD8陽性制御性T細胞等が知られている.我々は近年IL-10を大量に産生し転写因子Egr2を発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性Treg(LAG3 Treg)を新たなTregサブセットとしてマウスとヒトで同定した.興味深いことにマウスLAG3TregはSLEモデルマウスMRL/lprマウスの自己抗体産生と腎炎進行を抑制し,試験管内および生体内でのヘルパーT細胞とB細胞による抗体産生をPD-1-PD-L1およびFas-FasL依存性に抑制した.試験管内での抗CD40抗体によるT細胞非存在下でのB細胞の分裂および抗体産生はLAG3Tregにより抑制され,またFasL欠損B細胞を生体内に移入するとLAG3Tregは抗体産生を抑制できなかったことから,LAG3TregはB細胞を直接抑制すると考えられた.ヒトでも扁桃腺と末梢血にLAG3Tregが存在し,試験管内で細胞接触依存性に強力な抗体産生抑制能を発揮した.関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血ではLGA3Tregが減少していた.現在LAG3TregによるB細胞抑制機構と各種免疫抑制治療によるLAG3Tregへの修飾を解析中である.
全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成においてType I Interferon(Type I INF)とそれを産生するplasmacytoid dendritic cell(pDC)の重要性が示唆されているが,現時点ではSLE患者でのpDCの活性化を示す直接的な証拠は示されていない.そこで,我々はマウスではpDCが血清中の大部分のsoluble lymphocyte activation gene 3(sLAG3)を産生することに注目し,SLE患者と関節リウマチ(RA)患者,健常人で血清sLAG3濃度をELISAで測定した.健常コントロールの血清sLAG3濃度を1としてRA, SLEと比較すると,RAでは1.33+/−0.77だが,SLEでは36.2+/−21.5と著明な上昇を認めた.また,SLE患者では血清sLAG3濃度はSLEDAIとの相関も認め,多変量解析において特に血球障害との関連が示唆された.さらに,SLE患者の血清sLAG3濃度は末梢血単核球のType I INF signatureとの相関も認めた.以上より,SLE患者における血清sLAG3濃度は,Type I INF signatureを反映するSLEの新たな疾患活動性のマーカーとなる可能性が示唆された.
これまで自己免疫応答を抑制するT細胞サブセットとして,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性T細胞以外の制御性T細胞の存在が推測されてきた.我々は新たにIL-10を高産生するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞を見出した.このCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は,アナジーと関連する転写因子Egr2を高発現し,Egr2はCD4陽性T細胞にLAG3発現とIL-10産生の形質を付与する.今回SLEモデルマウスMRL/lprマウスで細胞移入を行うと,MRL/+マウス由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は腎炎の進行・自己抗体価の上昇を抑制したが,CD4陽性CD25陽性T細胞は抑制しなかった.さらにB6マウス由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は,B細胞とヘルパーT細胞を移入したRAG1欠損マウスの免疫による抗NP-OVA抗体産生,胚中心B細胞の分化を抑制した.CD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は試験管内の抗NP-OVA抗体産生も有意に抑制した.これらのことからCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞はB細胞の抗体産生,全身性自己免疫疾患を抑制する活性を持つと考えられた.今後Egr2の発現機構を中心とするCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞の分化機構を解明することで,新たな自己免疫疾患治療法の開発につながる可能性があると考えられる.
[背景]マウス新規制御性T細胞CD4+CD25−LAG3+T細胞(以下LAG3+Treg)は,転写因子early growth response gene-2(Egr-2)を発現し,強力な自己抗体産生抑制能を示す.Janus kinase(Jak)3欠損マウスではCD4+LAG3+T細胞が増加する. [目的]Jak阻害薬tofacitinibのLAG3+Treg分化への影響を検討した. [方法]若齢C57BL/6(B6), NZB/W F1(BWF1)マウスにtofacitinibを4週間持続投与し,脾臓LAG3+Tregをフローサイトメトリーで解析した.tofacitinib添加下にCD4+T細胞を培養し,Egr2の発現を検討した.tofacitinib添加下に培養したCD4+ T細胞をBWF1マウスに養子移入した. [結果]B6マウスではtofacitinib投与後に脾臓LAG3+Tregが増加したが,BWF1マウスでは若年齢よりLAG3+Tregが減少しており,tofacitinibによるLAG3+Tregの増加も見られなかった.tofacitinib添加下のCD4+ T細胞培養により,B6, BWF1マウス両方でEgr2が誘導された.tofacitinib添加下に培養したCD4+ T細胞はBWF1マウスの抗DNA抗体産生と蛋白尿進展を抑制した. [結論]Jak阻害薬は生体内のLAG3+Treg分化,試験管内のEgr2発現を誘導し,これらが作用機序の一つである可能性が考えられた.