インターロイキン(IL)-10 ファミリーはIL-10 を含む9 つのサイトカイン(IL-10,19,20,22,24,26,28A,28B,29)より構成される.これらのサイトカインは自然免疫,獲得免疫に関わる免疫担当細胞などから産生され,免疫学的恒常性の維持において中心的役割を担っている.その作用は多様であり,ときに二面性を有することより臨床応用が十分に進んでいない.たとえば,IL-10 は制御性T 細胞(Treg)などより産生され抑制性サイトカインとして機能するが,液性免疫に対しては促進性に作用し,自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)の病勢を悪化させると考えられている.一方で,TGF-βと協調的に液性免疫を負に制御するinhibitory cytokine synergy(ICS)作用も認める.本稿では,自己免応答制御機構におけるIL-10 をはじめとするIL-10 ファミリーの役割につき,Treg との関連も含め,概説する.
【目的】我々は以前,マウスCD4+CD25-LAG3+T細胞を新規制御性T細胞として同定した.2013年,RoncaroloらがCD4+LAG3+CD49b+T細胞をヒトにおけるType1制御性T細胞だと報告し,LAG3の重要性が強調されている.我々は関節リウマチ(RA)患者の末梢血単核球(PBMC)におけるCD4+CD25-LAG3+T細胞(CD25-LAG3+Treg)のデータを集め,健常人での機能解析を行い,その意義を見出すことを目的とした.【方法】東京大学医学部附属部病院のRA患者65人と健常人26人のPBMCを,FACSを用いて各細胞サブセットを解析し,CD25-LAG3+Tregと関節リウマチの臨床データとの相関,治療との関連を調べた.また,健常人PMBCを用いて機能解析を行った.【結果】健常人PBMCのCD25-LAG3+T細胞の解析ではCD49bの有無に関わらず,CD4+CD25+Tregと比べてもIL-10を高産生しており,またマウス同様にB細胞の抗体産生を著明に抑制していた.RAの活動性が高い群は低い群に比べ,また健常人と比べてCD4+T細胞におけるCD25-LAG3+Tregの割合は有意に低かった.多くの患者で,アバタセプト導入前と比較し投与6か月後にはCD25-LAG3+Tregが増加していた.【結論】CD25-LAG3+TregはIL-10を高産生し,B細胞の抗体産生を抑制し,RA患者の解析よりCD25-LAG3+Tregが自己免疫疾患の発症を抑制する可能性が示唆された.アバタセプトによる効果の意味づけは今後の課題だが,さらなる解析を進め,自己免疫疾患における意義を見出していく.
【背景・目的】全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成には,免疫寛容破綻によるB細胞活性化および自己抗体産生と,自己反応性T細胞の活性化が関与していると考えられている.近年,T細胞特異的early growth response gene-2(Egr2)コンディショナルノックアウト(CKO)マウスがSLE様の病態を呈すること,また,EGR2はSLE感受性遺伝子の一つであることが報告され,SLE発症機序におけるEgr2の関与が強く示唆されている.当研究室では,転写因子Egr2を特異的に発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞(以下,LAG3+ Treg)を報告しており,今回我々は,Fas変異遺伝子lprを有するSLEモデルMRL/lprマウスを用いてSLE病態形成におけるLAG3+ Tregの機能解析を行った.【方法・結果】lpr変異遺伝子を有さないMRL/+ LAG3+ TregのMRL/lprマウスへの養子移入は,MRL/lprマウスにおける抗dsDNA抗体価および腎炎の進行を著しく抑制した.一方,MRL/+ CD4+CD25+ Tregを始めとする各種T細胞サブセットの養子移入は治療効果を認めなかった.さらに,C57BL/6バックグラウンドマウスを用いた実験系では,B6/lprマウスおよびEgr2 CKOマウスから回収したLAG3+ Tregは野生型LAG3+ Tregと比して,抑制性サイトカイン産生能およびB細胞抑制能が著しく減弱していた.【考察】以上の結果より,LAG3+ TregはEgr2およびFas依存性に自己抗体産生を制御し,SLE病態形成抑制において中心的役割を果たすと考えられた.
【目的】Early growth response gene-2(Egr2)および,Egr3はT細胞のアナジー誘導に必須の転写因子であり,互いに機能を補完すると考えられている.T細胞/B細胞特異的Egr2/Egr3コンディショナルダブルノックアウト(DKO)マウスが全身性エリテマトーデス(SLE)様病態を呈すること,またEGR2がSLEの疾患感受性遺伝子であることが報告され,自己免疫疾患発症制御機構におけるEgr2/Egr3の役割が注目されてきている.またEgr2は当研究室で同定したCD4+CD25-LAG3+制御性T細胞(LAG3+ Treg)のマスター制御遺伝子として機能すると考えられており,今回我々は自己免疫疾患発症機序におけるT細胞上のEgr2/Egr3の役割につき検討を行った.【方法】T細胞特異的Egr2単独欠損(CKO)マウス(Egr2fl/fl CD4-Cre+),Egr2/Egr3 DKOマウス(Egr2fl/fl Egr3fl/fl CD4-Cre+)を作製し,抗dsDNA抗体価測定,病理組織学的解析,フローサイトメトリー解析などを行った.さらに,Egr2/Egr3欠損LAG3+ Tregの機能解析も行った.【結果】T細胞特異的Egr2/Egr3 DKOマウスはEgr2 CKOマウスよりも早期から腎炎などのSLE様病態を呈し,罹患臓器も多岐に渡った.また,疾患活動性に相関して胚中心の過剰形成を認め,抗dsDNA抗体価の上昇も認めた.Egr2/Egr3を欠損したLAG3+ Tregはその機能異常を認めた.【結語】Egr2/Egr3はT細胞において互いの機能を補完しながらSLE様病態の発症抑制において重要な役割を果たしていると考えられた.
制御性T細胞(Treg)は自己免疫応答に対する重要な抑制機構であり,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性Treg,Tr-1,CD8陽性制御性T細胞等が知られている.我々は近年IL-10を大量に産生し転写因子Egr2を発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性Treg(LAG3 Treg)を新たなTregサブセットとしてマウスとヒトで同定した.興味深いことにマウスLAG3TregはSLEモデルマウスMRL/lprマウスの自己抗体産生と腎炎進行を抑制し,試験管内および生体内でのヘルパーT細胞とB細胞による抗体産生をPD-1-PD-L1およびFas-FasL依存性に抑制した.試験管内での抗CD40抗体によるT細胞非存在下でのB細胞の分裂および抗体産生はLAG3Tregにより抑制され,またFasL欠損B細胞を生体内に移入するとLAG3Tregは抗体産生を抑制できなかったことから,LAG3TregはB細胞を直接抑制すると考えられた.ヒトでも扁桃腺と末梢血にLAG3Tregが存在し,試験管内で細胞接触依存性に強力な抗体産生抑制能を発揮した.関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血ではLGA3Tregが減少していた.現在LAG3TregによるB細胞抑制機構と各種免疫抑制治療によるLAG3Tregへの修飾を解析中である.
制御性T 細胞(Treg)は,自己および外来抗原に対する免疫寛容誘導において中心的な役割を果たしており,その機能不全は自己免疫疾患の発症に直結する.Treg は,①内因性Treg(naturally-occurring Treg:nTreg)と,②誘導性Treg(induced Treg:iTreg),に大別され,nTreg とiTreg が協調することで全身の免疫学的恒常性は保たれている.おもに胸腺で分化するCD4+CD25+nTreg は,転写因子Foxp3 がその抑制機能に重要なマスター制御遺伝子として知られている.一方,iTreg に関しては近年までその特異的な表面マーカーおよびマスター制御遺伝子は不明なままであり,その研究発展の大きな障害となっていた.当研究室では抑制性サイトカインIL-10 を高産生するCD4+CD25-LAG3+iTreg(LAG3 Treg)を同定した.LAG3 Treg は転写因子Egr2 を高発現し,その免疫抑制能はFoxp3 に依存しない.本稿ではLAG3 Treg による免疫システム制御機構について,最新の知見を含め概説する.