【背景・目的】全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成には,免疫寛容破綻によるB細胞活性化および自己抗体産生と,自己反応性T細胞の活性化が関与していると考えられている.近年,T細胞特異的early growth response gene-2(Egr2)コンディショナルノックアウト(CKO)マウスがSLE様の病態を呈すること,また,EGR2はSLE感受性遺伝子の一つであることが報告され,SLE発症機序におけるEgr2の関与が強く示唆されている.当研究室では,転写因子Egr2を特異的に発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞(以下,LAG3+ Treg)を報告しており,今回我々は,Fas変異遺伝子lprを有するSLEモデルMRL/lprマウスを用いてSLE病態形成におけるLAG3+ Tregの機能解析を行った.【方法・結果】lpr変異遺伝子を有さないMRL/+ LAG3+ TregのMRL/lprマウスへの養子移入は,MRL/lprマウスにおける抗dsDNA抗体価および腎炎の進行を著しく抑制した.一方,MRL/+ CD4+CD25+ Tregを始めとする各種T細胞サブセットの養子移入は治療効果を認めなかった.さらに,C57BL/6バックグラウンドマウスを用いた実験系では,B6/lprマウスおよびEgr2 CKOマウスから回収したLAG3+ Tregは野生型LAG3+ Tregと比して,抑制性サイトカイン産生能およびB細胞抑制能が著しく減弱していた.【考察】以上の結果より,LAG3+ TregはEgr2およびFas依存性に自己抗体産生を制御し,SLE病態形成抑制において中心的役割を果たすと考えられた.
【目的】Early growth response gene-2(Egr2)および,Egr3はT細胞のアナジー誘導に必須の転写因子であり,互いに機能を補完すると考えられている.T細胞/B細胞特異的Egr2/Egr3コンディショナルダブルノックアウト(DKO)マウスが全身性エリテマトーデス(SLE)様病態を呈すること,またEGR2がSLEの疾患感受性遺伝子であることが報告され,自己免疫疾患発症制御機構におけるEgr2/Egr3の役割が注目されてきている.またEgr2は当研究室で同定したCD4+CD25-LAG3+制御性T細胞(LAG3+ Treg)のマスター制御遺伝子として機能すると考えられており,今回我々は自己免疫疾患発症機序におけるT細胞上のEgr2/Egr3の役割につき検討を行った.【方法】T細胞特異的Egr2単独欠損(CKO)マウス(Egr2fl/fl CD4-Cre+),Egr2/Egr3 DKOマウス(Egr2fl/fl Egr3fl/fl CD4-Cre+)を作製し,抗dsDNA抗体価測定,病理組織学的解析,フローサイトメトリー解析などを行った.さらに,Egr2/Egr3欠損LAG3+ Tregの機能解析も行った.【結果】T細胞特異的Egr2/Egr3 DKOマウスはEgr2 CKOマウスよりも早期から腎炎などのSLE様病態を呈し,罹患臓器も多岐に渡った.また,疾患活動性に相関して胚中心の過剰形成を認め,抗dsDNA抗体価の上昇も認めた.Egr2/Egr3を欠損したLAG3+ Tregはその機能異常を認めた.【結語】Egr2/Egr3はT細胞において互いの機能を補完しながらSLE様病態の発症抑制において重要な役割を果たしていると考えられた.
制御性T細胞(Treg)は自己免疫応答に対する重要な抑制機構であり,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性Treg,Tr-1,CD8陽性制御性T細胞等が知られている.我々は近年IL-10を大量に産生し転写因子Egr2を発現するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性Treg(LAG3 Treg)を新たなTregサブセットとしてマウスとヒトで同定した.興味深いことにマウスLAG3TregはSLEモデルマウスMRL/lprマウスの自己抗体産生と腎炎進行を抑制し,試験管内および生体内でのヘルパーT細胞とB細胞による抗体産生をPD-1-PD-L1およびFas-FasL依存性に抑制した.試験管内での抗CD40抗体によるT細胞非存在下でのB細胞の分裂および抗体産生はLAG3Tregにより抑制され,またFasL欠損B細胞を生体内に移入するとLAG3Tregは抗体産生を抑制できなかったことから,LAG3TregはB細胞を直接抑制すると考えられた.ヒトでも扁桃腺と末梢血にLAG3Tregが存在し,試験管内で細胞接触依存性に強力な抗体産生抑制能を発揮した.関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)患者末梢血ではLGA3Tregが減少していた.現在LAG3TregによるB細胞抑制機構と各種免疫抑制治療によるLAG3Tregへの修飾を解析中である.
全身性エリテマトーデス(SLE)の病態形成においてType I Interferon(Type I INF)とそれを産生するplasmacytoid dendritic cell(pDC)の重要性が示唆されているが,現時点ではSLE患者でのpDCの活性化を示す直接的な証拠は示されていない.そこで,我々はマウスではpDCが血清中の大部分のsoluble lymphocyte activation gene 3(sLAG3)を産生することに注目し,SLE患者と関節リウマチ(RA)患者,健常人で血清sLAG3濃度をELISAで測定した.健常コントロールの血清sLAG3濃度を1としてRA, SLEと比較すると,RAでは1.33+/−0.77だが,SLEでは36.2+/−21.5と著明な上昇を認めた.また,SLE患者では血清sLAG3濃度はSLEDAIとの相関も認め,多変量解析において特に血球障害との関連が示唆された.さらに,SLE患者の血清sLAG3濃度は末梢血単核球のType I INF signatureとの相関も認めた.以上より,SLE患者における血清sLAG3濃度は,Type I INF signatureを反映するSLEの新たな疾患活動性のマーカーとなる可能性が示唆された.
これまで自己免疫応答を抑制するT細胞サブセットとして,CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性T細胞以外の制御性T細胞の存在が推測されてきた.我々は新たにIL-10を高産生するCD4陽性CD25陰性LAG3陽性制御性T細胞を見出した.このCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は,アナジーと関連する転写因子Egr2を高発現し,Egr2はCD4陽性T細胞にLAG3発現とIL-10産生の形質を付与する.今回SLEモデルマウスMRL/lprマウスで細胞移入を行うと,MRL/+マウス由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は腎炎の進行・自己抗体価の上昇を抑制したが,CD4陽性CD25陽性T細胞は抑制しなかった.さらにB6マウス由来のCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は,B細胞とヘルパーT細胞を移入したRAG1欠損マウスの免疫による抗NP-OVA抗体産生,胚中心B細胞の分化を抑制した.CD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞は試験管内の抗NP-OVA抗体産生も有意に抑制した.これらのことからCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞はB細胞の抗体産生,全身性自己免疫疾患を抑制する活性を持つと考えられた.今後Egr2の発現機構を中心とするCD4陽性CD25陰性LAG3陽性T細胞の分化機構を解明することで,新たな自己免疫疾患治療法の開発につながる可能性があると考えられる.
IL-10は抗炎症性サイトカインであり,IL-27はSTAT1, STAT3依存性にIL-10の産生を誘導する.また,CD4+T細胞におけるIL-10産生において,Blimp-1(遺伝子名Prdm1)も重要な働きをもつことが知られている. 既に我々はT細胞にanergyを誘導する働きをもつ転写因子Egr-2のCD4+T細胞への強制発現により,IL-10産生が誘導されることを報告した.今回我々はIL-27によるIL-10産生誘導におけるEgr-2の関与を検討した.CD4+ナイーブT細胞のTCR刺激時にIL-27を添加するとEgr-2, Prdm1, IL-10の発現亢進が認められた.Egr-2欠損CD4+ナイーブT細胞を用いた場合,Prdm1及びIL-10のIL-27 刺激による誘導は認められなかった.更に,IL-27受容体WSX1を欠損したCD4+ナイーブT細胞では,IL-27刺激によるEgr-2の誘導が消失した.Luciferase assayによりEgr-2の誘導がPrdm1プロモーターの活性化に繋がり,ChIP assayの結果Egr-2がPrdm1のプロモーター領域に結合することが明らかとなった.また,STAT1ノックアウトマウス並びにCD4特異的STAT3コンディショナルノックアウトマウス由来のCD4+ナイーブT細胞においては,IL-27刺激によるEgr-2の誘導は認められず,双方のEgr-2誘導への関与が示唆された.これらの結果,Egr-2とBlimp-1を介したIL-27シグナル伝達経路は,ナイーブT細胞からのIL-10産生に重要であることが示された.Egr-2を発現するCD4陽性CD5陰性LAG3陽性制御性T細胞サブセットとの関連も含めて考察する.