自己免疫病態におけるB細胞の機能発現と活性化にはT細胞との相互作用が極めて重要である.我々は,in vitro実験,患者末梢血リンパ球のFACS解析により自己免疫疾患での役割を検討した.ヒト末梢血B細胞を用いたin vitro解析により,BCR/CD40/TLRおよび濾胞性ヘルパーT(Tfh)細胞により産生されるIL-4,IL-21などの刺激が,Syk,Btk,Jakなどのチロシンキナーゼを介したシグナルの活性化を齎し,サイトカイン産生,分化誘導・クラススイッチに重要なgene network,抗体産生などを多様に制御していることを明らかにした.さらに,RA患者末梢血B細胞ではSyk,Btkのリン酸化が健常人に比し有意に亢進しており,特にACPA,RFなどの自己抗体陽性例において顕著であった.RA患者に対するT細胞共刺激調節剤CTLA-Ig療法は,ヘルパーT細胞サブセットにおけるTfh細胞の割合を特異的に減少させるとともに,B細胞でのSykのリン酸化を有意に抑制した.以上,B細胞はT細胞との相互作用により自己抗体産生を介した病態形成に重要な役割を担うが,これらを標的とした生物学的製剤やキナーゼ阻害剤は自己免疫異常の制御に有用である可能性が示唆された.今後,T細胞-B細胞の相互作用に関与する細胞内外のシグナル伝達異常が特定されることで新規治療法の開発が期待される.
【目的】SLE患者末梢血ではメモリーB細胞の増加を認めるが,その質的異常は不明である.今回,ケモカイン受容体発現によるB細胞の亜分類を試み,その的意義を検討した.【方法】健常人(HD)8例,RA 31例,SLE 56例の末梢血より単核球を分離,B細胞分化マーカー(IgD, CD27),ケモカイン受容体(CXCR3, CXCR5, CCR6)を染色後,8 color FACSを用いてリンパ球サブセット解析を行い,臨床病態との関連性を解析した.【結果】1)SLE患者CD19+CD20+B細胞ではHD,RAと比べCXCR5−B細胞が有意に増加し,特にIgD−CD27−/+メモリーB細胞で顕著であった(p<0.01).2)同集団は疾患活動性と相関せず活性化Tfh細胞と正相関を認めた(p<0.05).3)CXCR5−CXCR3−B細胞は抗Sm抗体価と,CXCR5−CXCR3+メモリーB細胞はエフェクターメモリーT細胞と正相関を認めた(p<0.05).4)免疫抑制療法により疾患活動性改善後もCXCR5−メモリーB細胞は残存した(p<0.05).【考察】SLEではCXCR5減弱とCXCR3増強を伴う病的なB細胞を認め,Tfh細胞との相互作用を介した自己抗体産生および病態組織に再循環するメモリーB細胞のエフェクター機能の獲得による病態形成が示唆された.さらに免疫抑制療法により疾患活動性改善後も末梢血に残存することから,既存治療では根治困難なSLEの病因に関与している可能性が示唆された.
全身性エリテマトーデス(SLE)の病態は,自己反応性T細胞やB細胞の活性化,自己抗体により形成される免疫複合体の組織沈着による多臓器障害が特徴である.我々は,活性化B細胞を標的とする抗CD20抗体リツキシマブ(RTX)を中枢・腎病変を有し既存治療抵抗性のSLE患者24例に投与し,投与後早期での8カラーFACSによるリンパ球サブセット解析及び投与5年後までの治療効果を検討した.SLEではB細胞が活性化しており,活動性の高い症例ではCXCR5陰性CXCR3陽性のメモリーB細胞の割合が増加した.RTXは末梢血よりメモリーB細胞を速やかに除去するとともに,ヘルパーT細胞における共刺激分子の発現やエフェクター細胞への分化異常を劇的に改善した.疾患活動性は投与前,5年後のSLE疾患活動性指数(SLEDAI)18.7→1.9,英国SLE評価指数(BAILAG)19.9→1.0と著明に改善した.経過中9名が再燃し,メモリーB細胞の増加(B細胞型),メモリーT細胞の増加(T細胞型)など異なる病態の再燃を認め,RTX再投与(4例),免疫抑制薬追加(4例:シクロホスファミドパルス,1例:タクロリムス)にて改善が得られた.以上,RTXは難治性SLEに対して,B細胞の除去によるT細胞の活性化の制御のみならず,リンパ球の分化異常を是正することで長期寛解を齎す可能性が考えられた.さらに,SLEはB細胞とT細胞のサブセット異常によって多様な病態を呈しており,リンパ球動態の評価が治療選択に有用と考えられる.